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PFOS(左)とPFOA。健康への影響が懸念されている=神奈川大

 健康への影響が懸念される有機フッ素化合物のPFAS(ピーファス)。化学的に安定していて自然界ではほとんど分解されず、「永遠の化学物質」とも呼ばれる。これを、何とかして無害なものに分解しようという試みがある。

 PFASのうち、「PFOS(ピーフォス)」や「PFOA(ピーフォア)」といった一部の物質は、肝機能の低下や生まれてくる子どもの体重低下、腎臓がんや乳がんとの関連性などが懸念されている。

  • PFASってどんな物質 使いみちや健康への影響、発生源は

 全国各地の井戸や河川などの水から基準値を超える濃度のPFASが検出され、活性炭などを使って水を浄化する取り組みが始まっている。

 一方、放置された使用済みの活性炭からPFASが漏れ出し、新たな汚染源となってしまうケースも起きている。きちんと保管することがまずは大前提だが、「永遠」と呼ばれるほど安定しているだけに、困った性質がいつまでも残り、いつしか何らかのトラブルで環境中に流出してしまう心配が残る。

 PFASをきちんと管理するだけでなく、無害なものに分解する技術が求められるのは、こうした事情があるためだ。

 現在、分解に用いられる代表的な技術は焼却だ。ただし、完全に分解するには1千度以上などの高温が必要とされ、大量のエネルギーを使ううえ、焼却に伴い発生するガスによって炉が劣化しやすくなるとされる。

 さらに、分解されたはずのPFASの一部が気体中を漂い、何らかのきっかけでPFOAなどが再生成されてしまう恐れも指摘されている。

半導体ナノ結晶、光触媒に

 立命館大の小林洋一教授たちのグループは昨年、LED光をあてることでPFOSなどを分解する方法を開発したと発表した。

 0.65ミリグラムのPFOSを、半導体材料の硫化カドミウムを極めて小さな結晶にした「半導体ナノ結晶」とともに、1ミリリットルの水に加えた。

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LEDの光を当て、PFOSの分解を試みる=小林洋一さん提供

 この状態で光を当てると、半導体ナノ結晶は化学反応を促進させる「光触媒」として働くという。PFOSは、強力に結びつくフッ素と炭素の組み合わせが17あるが、8時間ですべて切断することができた。水の中にはフッ化物イオンが含まれ、これは次のフッ素化合物をつくる際の原料として再利用できる。

 カドミウムは、過去に公害病のイタイイタイ病を引き起こした物質でもある。今回は技術の原理を確認するためにカドミウムを用いたが、今後はより安全性の高い素材によるナノ結晶を用いる。

 「カドミウム以外でも、ナノ…

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